中村文則
NAKAMURA Fuminori (PHOTO©KENTA YOSHIZAWA)
中村文則NAKAMURA Fuminori (PHOTO©KENTA YOSHIZAWA)
作家 1977年、愛知県生まれ。福島大学行政社会学部卒。2002年、「銃」で新潮新人賞を受賞してデビュー、芥川賞候補となる。2004年、「遮光」で野間文芸新人賞受賞。2005年、「土の中の子供」で芥川賞受賞。2010年、『掏摸(スリ)』で大江健三郎賞を受賞。同作の英語版『The Thief』はウォール・ストリート・ジャーナル紙で「Best Fiction of 2012」の10作品に選ばれた。2014年、ノワール小説への貢献により、日本人で初めて米文学賞「David L. Goodis 賞」を受賞。さまざまな悪意、心の闇を言葉によってかたちにすることで、それらに対峙する作品が多い。軽やかな文体ながら、自身が傾倒したというカフカ、ドストエフスキーの世界を思わせると評されている。作品は欧米、アジアなど18カ国で翻訳刊行されている。著作に『悪意の手記』『最後の命』『何もかも憂鬱な夜に』『世界の果て』『悪と仮面のルール』『王国』『迷宮』『惑いの森』『去年の冬、きみと別れ』『A』『教団X』『私の消滅』『R帝国』など。
中島京子
NAKAJIMA Kyoko
中島京子NAKAJIMA Kyoko
作家 1964年、東京都生まれ。東京女子大学文理学部史学科卒。出版社勤務を経て、1996年にインターンシップ・プログラムスで渡米。翌年、帰国した後、フリーライターとしてさまざまなジャンルで取材執筆活動をする。2003年、長編小説『FUTON』で作家デビュー。2010年、『小さいおうち』で直木賞受賞。2014年に『妻が椎茸だったころ』で泉鏡花文学賞、2015年に『かたづの!』で河合隼雄物語賞、歴史時代作家クラブ作品賞、柴田錬三郎賞を受賞。また同年『長いお別れ』で中央公論文芸賞、2016年に同作で日本医療小説大賞を受賞した。作品が扱う時代は17世紀から21世紀まで幅広く、それぞれの時代や社会における家族のあり方や、歴史の中で翻弄される個人などの主題を、ユーモアやパロディを交えて描くことに定評がある。作品として『均ちゃんの失踪』『イトウの恋』『桐畑家の縁談』『冠・婚・葬・祭』『平成大家族』『女中譚』『花桃実桃』『眺望絶佳』『パスティス』『ゴースト』など多数。
島田雅彦
SHIMADA Masahiko
島田雅彦SHIMADA Masahiko
作家・法政大学国際文化学部教授 1961年、東京都生まれ。東京外国語大学ロシア語学科卒。近畿大学文芸学部特任助教授をへて、2003年から現職。大学在学中の1983年に「優しいサヨクのための嬉遊曲」で作家デビュー。次々に問題作を発表し、現代社会が内包する問題を鋭く描き出し、文学シーンの最先端を疾走し続ける。小説だけでなく、自作の戯曲、オペラ台本を自ら演出するなど、広範な活動を展開。84年『夢遊王国のための音楽』で野間文芸新人賞、92年『彼岸先生』で泉鏡花賞、2006年『退廃姉妹』で伊藤整文学賞、07年『カオスの娘―シャーマン探偵ナルコ』で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。ほかに『忘れられた帝国』『自由死刑』『内乱の予感』『彗星の住人』『悪貨』『英雄はそこにいる』『虚人の星』など著書多数。エッセイなどに『漱石を書く』『感情教育』『妄想人生』『小説作法ABC』ほか。
島本理生
SHIMAMOTO Rio (PHOTO©HAYATA DAISUKE)
島本理生SHIMAMOTO Rio (PHOTO©HAYATA DAISUKE)
1983年、東京都生まれ。立教大学文学部日本文学科中退。1998年、初めて応募した「ヨル」で文芸誌「鳩よ!」掌編小説コンクール第2期10月号当選、年間MVPを受賞。2001年、「シルエット」で群像新人文学賞優秀作を受賞し、デビュー。2003年、高校在学中に「リトル・バイ・リトル」が芥川賞候補となり、大きな話題を呼ぶ。同作で野間文芸新人賞を最年少で受賞。2005年に刊行した『ナラタージュ一』は70万部のベストセラーとなり、2017年に行定勲監督で映画化。2015年『Red』で島清恋愛文学賞を受賞。2018年、「ファーストラヴ」で直木賞受賞。繊細な文体で恋愛を描くことで注目されてきたが、その根底には親との歪んだ関係や性暴力などの問題がある。近年の作品は「性愛に関わる私の物語」から脱却し、「過去の中の無数の”私”を救う」ものになったと評価される。『アンダスタンド・メイビー』『よだかの片想い』『匿名者のためのスピカ』『クローバー』『夏の裁断』『イノセント』『わたしたちは銀のフォークと薬を手にして』など著書多数。
柴崎友香
SHIBASAKI Tomoka (PHOTO©KAWAI HONAMI)
柴崎友香SHIBASAKI Tomoka (PHOTO©KAWAI HONAMI)
作家 1973年、大阪府生まれ。大阪府立大学総合科学部卒。1999年に短編「レッド、イエロー、オレンジ、オレンジ、ブルー」でデビュー。同作を収録した初の単行本『きょうのできごと』(2000年発刊)が、2004年に行定勲監督によって映画化され、話題となる。07年、『その街の今は』で芸術選奨文部科学大臣新人賞、織田作之助賞大賞、咲くやこの花賞を受賞。10年、『寝ても覚めても』で野間文芸新人賞受賞(2018年、濱口竜介監督により映画化)。14年、「春の庭」で芥川賞受賞。日常的なできごとを題材に現代の生活を描き、近年は場所や時間を行き来しつつ、人々の記憶や土地の歴史をテーマにした小説を書いている。主な作品に『フルタイムライフ』『ショートカット』『ビリジアン』『週末カミング』『わたしがいなかった街で』『パノララ』『千の扉』など。エッセイ集『よう知らんけど日記』、大阪の建築ガイド本『大阪建築みる・あるく・かたる』(共著)などもある。
阿部公彦
ABE Masahiko (PHOTO©KAWAI HONAMI)
阿部公彦ABE Masahiko (PHOTO©KAWAI HONAMI)
評論家・作家・東京大学文学部教授 1966年、神奈川県生まれ。東京大学文学部修士過程をへて、ケンブリッジ大学でPhD取得。2001年より現職。専門は英米詩。T・S・エリオットなど20世紀前半の詩から、ロマン派やシェイクスピアなどについての論考も発表している。また英米の小説、日本語の詩や小説について精読しながら、「退屈」「凝視」「幼さ」「胃弱」といった視点での考察を重ねている。1998年、小説「荒れ野に行く」で早稲田文学新人賞受賞。2013年、『文学を〈凝視〉する』でサントリー学芸賞受賞。『モダンの近似値』『即興文学のつくり方』『英詩のわかり方』『英語文章読本』『スローモーション考』『小説的思考のススメ』『善意と悪意の英文学史』など著書多数。翻訳に『フランク・オコナー短編集』、バーナード・マラマッド『魔法の樽 他十二篇』など。
小山田浩子
OYAMADA Hiroko (PHOTO©SHINCHOSHA)
小山田浩子OYAMADA Hiroko (PHOTO©SHINCHOSHA)
作家 1983年、広島県生まれ。広島大学文学部卒。2010年「工場」で新潮新人賞を受賞してデビュー。13年、同作を収録した初の短編集『工場』が三島由紀夫賞候補となる。同書で織田作之助賞受賞。14年、「穴」で芥川賞受賞。短編作品が国際文芸誌「GRANTA」に掲載され、作品は韓国、台湾で翻訳されるなど、国外でも高く評価されている。作品は改行の少ないことが特徴的だとされ、広島という地方都市在住であることから、都市部ではない地方の現代の情景を広島の言葉で繊細に描いているとも指摘される。また、日常の近くにある「異界」を浮かび上がらせるとも評される。著書に『工場』『穴』『庭』。
若松英輔
WAKAMATSU Eisuke
若松英輔WAKAMATSU Eisuke
批評家・随筆家・詩人 1968年、新潟県生まれ。慶應義塾大学文学部仏文科卒業。2007年、「越知保夫とその時代 求道の文学」で三田文学新人賞評論部門当選。2013年から約2年間、「三田文学」編集長を務める。2016 年、『叡知の詩学 小林秀雄と井筒俊彦』で西脇順三郎学術賞を受賞。2018年、詩集『見えない涙』で詩歌文学館賞を受賞。批評家としては、文学、思想、芸術を架橋しつつ、近代日本精神史に新たな道すじを提示する作品を執筆している。詩人としては、感情の重層性、情感の深みを描き出す作品を世に送り出している。著書に『井筒俊彦 叡知の哲学』『イエス伝』『小林秀雄 美しい花』『魂にふれる 大震災と、生きている死者』『生きる哲学』『霊性の哲学』『悲しみの秘義』『内村鑑三 悲しみの使徒』『言葉の贈り物』『詩集 幸福論』など多数。
上田岳弘
UEDA Takahiro (PHOTO©SHINCHOSHA)
上田岳弘UEDA Takahiro (PHOTO©SHINCHOSHA)
作家 1979年、兵庫県生まれ。早稲田大学法学部卒。ITベンチャー企業の役員を勤める傍ら小説を執筆する。2013年、「太陽」で新潮新人賞を受賞し、デビュー。SF的ヴィジョンと文学性を備えた作風が評判を呼び、以降、立て続けに話題作を発表。ありふれた現実から、観念の高みまで想像力を飛ばす作風を「新超越派」と評される。2015年、「私の恋人」で三島由紀夫賞受賞。2016年、国際文芸誌「GRANTA」日本語版でBest of Young Japanese Novelistsに選出される。18年、『塔と重力』で芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。文芸誌「新潮」とWEB上での同時連載企画「キュープロジェクト」で多くの読者を獲得した。その後、舞台作品への原作提供など、他分野との共同企画も手がけている。著書に『太陽・惑星』『私の恋人』『異郷の友人』『塔と重力』など。
平野啓一郎
HIRANO Keiichiro (PHOTO©MIKIYA TAKIMOTO)
平野啓一郎HIRANO Keiichiro (PHOTO©MIKIYA TAKIMOTO)
作家 1975年、愛知県生まれ。福岡県北九州市で育つ。京都大学法学部卒。大学在学中の90年、文芸誌『新潮』に初めて投稿した小説「日蝕」が掲載され、この作品で芥川賞を受賞。2008年、『決壊』で芸術選奨文部科学大臣新人賞。2017年、『マチネの終わりに』で渡辺淳一文学賞を受賞。一作ごとにまったく異なる作風ながら、現代人のアイデンティティを中心に、愛、死、美、時間、記憶といったテーマを一環して描き続けている。注目すべき現代日本文学として、作品はフランス、韓国、台湾、ロシア、スウェーデンなどで翻訳されている。美術、音楽にも造詣が深く、幅広いジャンルで批評を執筆。2014年には、国立西洋美術館のゲスト・キュレーターとして「非日常からの呼び声 平野啓一郎が選ぶ西洋美術の名品」展を開催。同年、フランス芸術文化勲章シュヴァリエを受章。『一月物語』『葬送』『顔のない裸体たち』『高瀬川』『滴り落ちる時計たちの波紋』『あなたが、いなかった、あなた』『文明の憂鬱』『かたちだけの愛』など著作多数。エッセイなどに『モノローグ』『「生命力」の行方』『ショパンを嗜む』ほか。